成功した再発明の歴史
     インド洋の小さな島国で、利用可能な天然資源に乏しいモーリシャスにとって、ただ座して待つという選択肢は存在しませんでした。繁栄を築き、環境の変化に適応し、再構築し続けなければならないという認識が古くからありました。世界の現実が変化するたびに、モーリシャスは経済を再編し、新しい機会を受け入れ、国際舞台で競争する新たな方法を見出してきました。
1968年3月12日の独立当初、経済は砂糖に大きく依存しており、「小さく孤立し、貧しく、依存的な国が、植民地時代を終えた途端に新植民地主義に陥る ― 第三世界の中の第三世界」と評されました。しかし2011年には、ノーベル経済学賞受賞者で世界銀行元チーフエコノミストのジョセフ・E・スティグリッツが「モーリシャスの奇跡」と呼び、この小国が「独立以来、民主主義、強い社会的結束、急速な経済成長の実績を築いた」と称賛しました。独立時の一人当たりGDPは250ドルでしたが、2011年には9,300ドルに、2025年には砂糖依存の単一産業から脱却し、約13,000ドルに達しました。では、この変革はどのように達成されたのでしょうか。
最初の再発明
1970年に操業を開始した輸出加工区(Export Processing Zone;
EPZ)が第一歩でした。これによりモーリシャスは輸出主導型工業化の代表例となり、1980年代の繊維・衣料ブームが初の主要産業基盤を築きました。観光業も拡大し、モーリシャスは大衆的なビーチ経済ではなく高級リゾート地へと変貌しました。1990〜2000年代には金融サービスが第三の柱となり、租税条約、法的安定性、国際ビジネスの拡大に支えられました。特筆すべきは、モーリシャスが長年にわたりインドへの外国直接投資の主要供給国であったことです。インド政府のデータによれば、2000年1月から2024年12月までの累積FDI流入額でモーリシャスが首位を占め、総額の約24.85%、約1,790億米ドルに達しました。
2000年代以降はICT、ビジネス・プロセス・アウトソーシング、物流、フリーポートが加わり、産業の多様化がさらに進みました。モーリシャスは改革者としても評価され、世界銀行の2020年「ビジネス環境」ランキングで世界13位、アフリカ1位となりました。統治や民主主義のランキングでも常に高評価を得ています。成功の秘訣は魔法ではなく、政策の方向性、制度の信頼性、民間投資、技能開発が時間をかけて連動したことでした。
2026–2027年度予算が示すもの
最近発表されたモーリシャス国家予算2026–2027は、より厳しい世界環境の中で再び実践的な再発明を求めています。各世代が異なる経済環境に直面し、今日の環境はAI、デジタル変革、気候変動、競争激化する世界経済によって形作られています。これを踏まえ、予算は「未来に備えたモーリシャス」のビジョンを掲げ、短期的措置にとどまらず、持続的な改革・革新・投資による長期的競争力強化を重視しています。 戦略的柱として、AIとデジタル化、スタートアップや中小企業支援、港湾・交通・通信などのインフラ整備、ブルーエコノミーなどの戦略的転換、エネルギー・水・食料安全保障などのレジリエンス強化、投資環境改善が挙げられています。実際には多くのテーマは新しいものではなく、10年以上政策課題として存在してきました。予算が示すメッセージは、新たな経済の方向性を打ち出すことよりも、既知の優先課題への取り組みを加速させることにあります。
現状をバランスよく捉える
今日のモーリシャスを公平に評価するなら、二つの視点を併せ持つべきです。モーリシャスは依然としてアフリカで最も印象的な開発事例の一つであり、信頼できる制度、強力な民間部門、社会的安定、投資家やパートナーからの高い評価を維持しています。しかし同時に、過去の成功が未来の成功を保証するわけではないことも明らかになっています。公的債務は高水準で政府支出や投資を制約し、外部収支は圧迫され、気候変動への適応やインフラ整備の必要性はますます高まり、若年失業や生活費高騰といった社会問題も顕在化しています。
観光業は回復しましたが他の高級リゾート地との競争が激化し、旅行者はより高い価値や独自性を求めています。金融サービスは依然として強みですが、国・地域としての信用格付けや国際的評価をめぐる課題もあります。港湾部門は、中東情勢に伴う航路の変化などにより一定の恩恵を受けていますが、それがいつまで続くかは不透明で、地域港湾間の競争は確実に激化しています。今は立ち止まる時ではありません。モーリシャスは、既存の強固な基盤を活かし、長年掲げてきた構想を具体的な行動へと移す必要性を認識しています。
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今日の地政学的な逆風は、モーリシャスだけでは制御できないものですが「未来に備えたモーリシャス」という政府の野心は十分に達成可能です。モーリシャスはこれまで、数々の経済計画を着実に実行してきました。その発展の各章は、変化を認識し、新しい機会をつかみ、目的を持って適応する能力によって形作られてきました。注意すべきは、次の再発明は国内制約がより顕著になるため、これまで以上に困難かもしれないという点です。しかしそれはモーリシャスの物語を損なうものではなく、再発明が困難であり、従来の慣行を見直し、新しい方法を見出す必要があることを思い出させるに過ぎません。
References | Notes
- フーベール, ジャン(Houbert, Jean. 「モーリシャス:独立と依存」 『現代アフリカ研究ジャーナル』The Journal of Modern African Studies 第19巻 (1981年): 75–105頁.