家族と過ごすクリスマス
     ケニアの12月は、日本の年末とはまったく違います。 気温は25度前後、強い日差しの中で人々は「メリークリスマス!」と声を掛け合います。雪はありませんが、12月に入ると少しずつ街が色づき、買い物袋を提げた人々や、サンタ帽をかぶった店員の姿をあちこちで見かけるようになります。街全体が徐々にクリスマスムードに包まれていくのです。
ケニアでは人口の約8〜9割がキリスト教徒と言われており、クリスマスは宗教行事であると同時に国民的なイベントです。多くの人が“upcountry”と呼ばれる地方の実家へ帰省し、家族や親戚と過ごします。12月中旬になると長距離バスのチケットは取りづらくなり、街では大きな荷物を抱えた人々をよく見かけます。ナイロビの渋滞が嘘のように減り、ナイロビの中心地やオフィスも静かになります。
一方で、スーパーやレストランなどの小売業界は12月が一年で最も忙しい時期です。「12月は戦場だよ」と笑う店員も多く、帰省前の買い出しで店内はどこも満員。食料品、飲料、衣類、プレゼントをまとめ買いする人たちでレジ前には長い列ができます。街は賑わっているのに港はスローに——そんな季節がケニアの12月です。
クリスマス当日は、家族との時間を大切にします。庭先でニャマチョマ(炭火焼肉)を囲み、子どもたちは新しい服を着て走り回る。教会では賛美歌が響き、夕方には親戚が集まって食事を囲む。「家族と過ごすこと」こそが、この国における最大の贈り物です。
また、12月は街の空気がどこか浮き立ったようになります。スーパーマーケットやタクシーなどでは「Merry Christmas!」の声とともにチップを求められる機会が増えます。店員や運転手の皆さんはいつもより張り切って袋詰めや荷下ろしを手伝ってくれます(笑)。
一方で、残念ながらスリや強盗が増えるのもこの時期の現実です。「子どものプレゼントを買うため」と言われることもありますが、家族を大切にするあまり起きてしまうのかもしれません。いずれにせよ、年末は少し慎重に行動する必要があります。
そして、ケニアではお正月は意外とあっさりしています。12月25日のクリスマスが年内最大のイベントで、年越しの瞬間には花火やカウントダウンがありますが、翌日にはバスが動き出し、現地企業では1月2日から通常業務を再開する企業も少なくありません。「Happy New Year!」の挨拶を交わしたら、すぐに仕事モード。年始の長期休暇という文化はありません。
スローになる港
一方で、私たち物流業界にとって12月は少し気を遣う時期です。通関・陸送企業や税関、港湾関連などの関係当局でも多くの職員が休暇に入るため、通関の進み方がいつもよりスローになります。書類の承認や現物検査のスケジュールが遅れ、場合によっては年をまたいでしまうこともあります。貨物が港に留まっている間も保管料等は発生しますので、弊社では毎年、お客様にこの時期の出荷を避けていただくようお勧めしています。
例えば、貨物が年内に届く必要がある場合は11月中の輸入に前倒ししていただく、逆に余裕がある場合は1月以降の到着に調整いただくなど、港や通関が混み合う12月を避けることで、リードタイムやコスト増のリスクを大きく抑えることができます。もちろん、お客様のご希望スケジュールに沿って手配いたしますが、年末の港湾業務は通常よりも時間がかかる傾向にあるため、事前の調整をお勧めしております。
年が明けると、港や通関業務も少しずつ再開します。とはいえ、すぐにフル稼働というわけではなく、年末に滞留していた貨物の処理や書類の確認から順番に進んでいく形です。現場の担当者も徐々に戻り、時間をかけて通常ペースに戻していきます。「港が動き出す」というよりも、年末に止まっていた分が少しずつ解消していくという感覚に近いかもしれません。
今年も年末の港はスローになりますが、その向こうでは、人々が家族と過ごす穏やかな時間を大切にしています。私たちも貨物を安全に届け、皆が安心して新年を迎えられるよう、最後まで気を引き締めて取り組んでいきたいと思います。